No24. 成功体験はなぜ上肢機能を変えるのか

どうも、サギョウ先生です!

臨床で「麻痺手を動かす練習」をするとき、難しすぎる課題を何度もやってもらっていませんか? 実は、失敗ばかりの練習は効率が悪いどころか、運動学習のブレーキになってしまうことがあるんです。

なぜなら、脳が運動を学習するためには「成功体験」という最高のご褒美が必要不可欠だからです。前回、運動学習の仕組みには3つの規則があると紹介しましたが、この成功体験に基づいた学習を「強化学習(報酬による学習)」といいます。

強化学習とは、人間と環境の相互作用から報酬を得て、報酬を最大化するように自己の選択可能な行動の価値を学習するものです。そして、脳内でこの「正の強化」が行われるためには、ドーパミン作動系が働く必要があります。

患者さんが「あ、うまく手が届いた!」「掴めた!」という達成感(報酬)を感じると、脳の大脳基底核という部分から「ドーパミン」という神経伝達物質がドバッと分泌されます。このドーパミンが脳のネットワークを強化し、「今の正しい動かし方」を強力に脳へと記憶させます。

つまり、上肢機能を変えるためには、セラピストが患者さんの麻痺手の能力に合わせた「絶妙な難易度調整(成功確率が高くなる設定)」を行うことが超重要になります。

できない課題を無理に繰り返して「失敗体験」を重ねるのではなく、「できた!」を積み重ねる仕組みを作ることこそが、生活で使える手への一番の近道です!

次回は、もう一つの重要な要素である「エラー情報」が上肢機能をどう変えるのかについて解説します。

今回の内容はほんの一部です。詳しくはInstagramやnoteを確認してみてください。公式LINEでは質問受付中です!

参考文献
長谷公隆:運動学習理論に基づく リハビリテーションの実践 第2版.医歯薬出版株式会社. 2016.
道免和久(監)竹林崇(編):行動変容を導く! 上肢機能回復アプローチ 脳卒中上肢麻痺に対する基本戦略.医学書院,2017.
Wachter T, et al: Differential effect of reward and punishment on procedural learning. J Neurosci 29 (2):436-443,2009.
Jeffrey R,et al:Dopamine neurons report an error in the temporal prediction of reward during learning.Nature Neuroscience 1:304-309,1998. 銅谷賢治:強化学習とメタ学習の脳内機構ー大脳基底核と神経修飾物質系ー.日本神経回路学会誌,9(1):36-40,2002.道免和久:運動学習から考察するリハビリテーション臨床.Jpn J Rehabil Med Vol. 56 No. 5 ,391-397.2019.

図はRe:Gakusyaが参考文献をもとに作成したものです。

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